新型コロナウイルスの蔓延によって、世界中の製造業が大きな影響を受けています。産業界は依然として人手不足に悩まされており、この状況が製造業におけるスマートソリューションの導入を加速させています。利用可能なスマートソリューションのうち、自律移動ロボット（AMR）はスマートマニュファクチャリングにおいて重要な役割を果たすことになります。Inkwood Research社のレポートによると、2021年から2028年にかけて、AMR市場は23.43%のCAGRを記録し、100億米ドルに達する見込みです。この有望な可能性により、数多くの産業界の大企業やスタートアップ企業がAMR市場に参入しています。
しかし、AMRの開発には、多様なシステムや部品の統合が必要であり、多くの人材と時間、コストが必要となります。開発スケジュールが遅れれば、市場機会を逸することになります。
ADLINKはAMR開発者の悩みを特定し、ソフトウェア定義のEtherCATをROS 2コントローラに統合することに先駆的に取り組みました。ROS 2コントローラはEtherCAT通信プロトコルを介してモーターやロボットアームの動作を直接制御することができ、モーターやロボットアームのコントローラのハードウェアのコストを削減するだけでなく、ナビゲーションコントローラとモーターやロボットアームのコントローラの統合に費やされていた時間を短縮することができます。
EtherCAT技術は、産業用制御として一般的に使用されており、モーターやロボットアームの特定のサプライヤーへの依存を減らし、AMRの開発および生産をより柔軟にすることができます。
パナソニックは、ADLINKのソフトウェア定義のEtherCAT + ROS 2ソリューションを採用し、EtherCATモーターと統合して、わずか2ヶ月でAMRの開発を完了させました。この迅速な開発ソリューションは、2022年3月に日本で開催された国際ロボット展（iREX）でデビューを果たしました。
現在のAMRソリューションのうち、モーターとロボットアームはそれぞれ専用のモーターコントローラとロボットアームコントローラで操作するため、必要なモーションコンポーネントは異なるサプライヤーから供給され、調達コストを削減することが困難です。ROSオペレーティングシステムのアルゴリズムは、モーションコンポーネントのサプライヤーが異なることに起因するハードウェアとソフトウェアの統合問題を解決できますが、AMRの精密な制御を実現するには、統合に多くのリソースと時間が必要なことに変わりはありません。
「ADLINKは、ナビゲーションコントローラとモーターおよびロボットアームコントローラの統合の問題を解決するために、すべてのモーションコントロール機能を、ソフトウェア定義のEtherCATを搭載したROS 2ベースのナビゲーションコントローラに統合しています。AMR開発者は、対応するROSパッケージを選択するだけで、EtherCATベースのロボットアームやモーターを制御できるため、コントローラの統合にかかる多くの時間やハードウェアコストを削減することができます。総コストは約30%削減でき、AMRの開発期間を短縮して新たな市場機会をつかむことができます。」と、 ADLINKのSmart Machine Product CenterのマネージャーであるRay Linはコメントしています。
もう一つの問題は、モーターやロボットアームはすべて特定のサプライヤーから供給されており、COVID-19はサプライチェーンに影響を与え続けていることです。AMRメーカーが特定のサプライヤーに依存している場合、部品の選択肢が限られると、顧客への納期約束を果たせなくなる可能性があります。EtherCATはオープンな通信プロトコルであり、産業用制御の分野で数十年にわたり実証されています。多様なサプライヤーとの標準化されたオプションは、AMRメーカーに材料調達の柔軟性を提供します。
現在の工場の多くは、何年も前に計画および建設されたものです。フロアレイアウトや生産ラインの動作ルートが固定化されており、AMR導入に伴う工場の再構築が困難な状況です。そのため、小型化もAMRメーカーにとっては課題となっています。
Ray Linは、「ソフトウェア定義のEtherCATとROS 2コントローラの組み合わせは、AMRを小型化するための完璧なソリューションです。モーターやロボットアームのコントローラに必要なスペースをなくすことで、AMRのサイズを縮小し、より多くの生産ユニットを同時に設置するためのスペースを確保することができるのです。これにより、AMRを使用したオペレーションの稼働率を大幅に向上させることができます。」と、コメントしています。
EtherCATの特長は、リアルタイム性と高い同期性で、モーターやI/Oの制御をより正確に、標準化された方法で動作させることができます。
ADLINKのソフトウェア定義のEtherCATは、モーションコントロールカードを追加することなく、複数のADLINKのWindowsベースのエッジコンピューティングプラットフォームにインストールすることが可能です。これにより、エッジコンピューティングプラットフォームがEtherCATマスターとして機能し、EtherCATスレーブと直接通信することができます。
さらに、ADLINKのエッジコンピューティングプラットフォームは、Intel®プロセッサを搭載しています。高い演算性能により、エッジコンピューティングプラットフォームは最大128軸のモーションコントロールに対応し、サイクルタイムは125μsに短縮されます。この性能は、半導体や電子機器製造などの高速かつ高精度なモーションコントロールアプリケーションに非常に適しています。
