警察や消防などの公共の安全を守る行政機関(以下、パブリックセーフティ機関)はテクノロジーを活用して、記録保存の効率化、生体認証による迅速な身元確認、ボディカメラを携帯したファーストレスポンダーの免責補償など、様々な分野の作業効率を改善しています。とはいえ、広く普及しているソリューションがパブリックセーフティに役立つテクノロジーの例となるには、対応する通信ネットワークが存在する必要があります。
5Gはすべてに変化をもたらします。この次世代のモバイルネットワークによって、あらゆる種類の重要情報へのアクセス、リアルタイムのデータ共有、より迅速な応答が可能になるので、ファーストレスポンダーがより効率的に作業し、優れたサービスをコミュニティに提供するのに役立ちます。
5GとMEC: 切り離せない組み合わせ
第5世代のモバイルネットワークに対応した待望の製品がついに登場してきました。ユーザーは4Gの最大100倍の速度と低遅延というメリットを享受できます。一部のユーザーが感じていた通信のズレはほとんどなくなります。5Gはより多くのデバイスに同時接続できるので、パブリックセーフティ機関とデータを共有するスマートシステムも構築可能です。また、4Gに比べ、新しいネットワークに必要な電力は少なくて済むので、
電力消費が最大90%減少し、コスト削減につながります。
5Gが公共サービスに提供する最大のメリットの1つは、ネットワークスライシングです。ネットワークプロバイダやネットワーク管理者はこの機能により、ネットワークを複数の仮想ネットワークに「スライス」してから、特定のユーザーまたはデバイスを優先できます。これは、信頼性の高いオンデマンドサービスを必要とするパブリックセーフティ機関にとって重要な機能です。
5G対応製品の登場は、パブリックセーフティに高度な機能をもたらすパズルの最後のピースとなるマルチアクセス・エッジ・コンピューティング(MEC)の普及の増加に同調しています。MECはエッジでの高度な計算を可能にするので、すべてのデータをクラウドやデータセンターに送信する必要はありません。パブリックセーフティ用に設計されたIoTシステムにMECを導入すると、重要なタスクが遅延なく確実に実行されるようになり、生死を左右することが少なくないパブリックセーフティ向け通信に影響を与えかねない障害や停電のリスクが排除されます。
パブリックセーフティに与える5Gの影響
5Gの登場で、パブリックセーフティ機関が直ちに改善を経験できるのは以下の分野です:
通信
現在、
ファーストレスポンダーへの専用アクセスを提供しているネットワークもありますが、それらのチャンネルを使って送受信されるデータがすべて、消防署やその他のパブリックセーフティ機関に直ちに提供されるとは限りません。消防署が5Gを使えば、リアルタイムでデータを受信し、ファーストレスポンダーの位置を迅速に特定して、より効果的に応援を派遣するのが可能な新しい体系を構築できます。また、ネットワークに5Gを導入すると、スマートフォン、スマートデバイス、スマートホームなどからデータに手軽にアクセスできるようになります。
パブリックセーフティも通信の束縛から解放されます。5Gの速度と信頼性により、音声や文字に加えて、ファーストレスポンダーや管理者が迅速かつ効率的に業務を遂行するのに必要なビデオやドキュメントの伝送が容易になります。
ヘルスケア
医療従事者にとって、農村部や遠隔地の患者のケアは挑戦となります。5Gは、医師が医療記録や画像などの大きなファイルに迅速かつ確実にアクセスできるアプリケーションに対応するだけでなく、より広範なエリアをカバーできます。現在、十分な医療サービスを受けておらず、医療のネットワークから取り残された人々にとって、最後の頼みの綱となるのが遠隔医療です。 5Gはまた、リアルタイムのビデオを使って現場で指導にあたるER医師とファーストレスポンダーを直接接続できます。さらに、5Gは、応急措置を必要とする緊急事態にファーストレスポンダーを支援できるように、仮想現実(VR)と拡張現実(AR)に対応した速度と帯域幅を備えています。
交通管制
5Gを使用すると、ネットワークは現在4Gで使用されているどのシステムよりもはるかに効率的に、緊急車両の移動を優先できるようになります。5Gに対応した交通管制システムは、路上の各車両に接続して現在進行形のネットワークを作成し、渋滞を回避すると共に、緊急車両に道を譲れるように信号を制御できます。
また、5Gネットワーク対応の交通管制システムは車載のナビゲーションシステムと通信して、緊急時や渋滞時にドライバーが最適なルートを見つけるのを支援します。
さらに、5Gは、安全な運転のアシストや自動運転に必要な迅速で信頼性の高いデータ共有の基盤を構築します。
警察
警察官は5Gにより、車両登録、身元調査、身元確認など、取得に数分ないし数時間かかる情報に迅速にアクセスできるようになります。データへの迅速なアクセスに加えて、ファーストレスポンダーが音声データをアプリに送信できるようになるので、事件や事故後に処理する必要のある事務作業も削減できます。
また、ロボットが警察や消防の業務で重要な役割を果たし始めています。それらのロボットはエリアの監視、制限区域への侵入、汚染地域や危険環境への立ち入りなど、人間にとって極めて危険な作業を実行できます。5Gを使えば、緊急時におけるロボットの確実な遠隔制御に加え、ロボットが収集したビデオやセンサーのデータへのリアルタイムなアクセスが可能になります。
遠隔監視
5Gで遠隔監視システムの効率と品質が向上するので、高解像度データのリアルタイムな送信、より多くのカメラやデバイスの配備、ドローンや自動運転車を活用した高制御システムの構築が可能となります。また、5Gの速度とMECのエッジ機能を統合すれば、アラームのトリガーや当局への通知などで、だれかが境界を越えたり、セキュリティに違反したりした場合にアクションを実行するシステムを実現できます。
最後に、パブリックセーフティが待ち望んでいたこと
ヨーロッパ緊急通報用電話番号協会(EENA、European Emergency Number Association(EENA)はこのように予測しています。「
5Gは発明の時代の到来を告げている …5GとAI(人工知能)は、何十億もの接続要素、膨大な量のデータ、クラウド内のすべてのデータを意味するようになるだろう。ファイルの共有、オンラインによる購入、コンテンツの複製に関する方法に変化がもたらされる。」
パブリックセーフティ機関は、5Gが有する可能性によって、現在のプロセスが向上し、高度な技術の使用が可能になることを目撃できます。とはいえ、これはこの次世代モバイルネットワークが及ぼす影響の始まりに過ぎません。情報を共有する方法、時間、場所の制限が減少することで、パブリックセーフティのプロセスの自由な発想と構築が可能となり、最終的にはより効率的なサービスの提供とより安全な世界の実現につながります。
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